善意遠近法のしくみ
善意遠近法は第三者が福祉サービスの内容を「善意の道徳」が原因で勘違いしてしまう事といえます
本当は高い基準で福祉サービスをしなければいけないのに、人間関係の距離感が遠い人には強い好意はもてないので、ちょっといいことをすればすごくいいサービスと勘違いしてしまうのです
ここでも善意のせいで福祉が機能しなくなっています
奨学金の福祉サービス
では奨学金の福祉サービスで善意遠近法を例えてみたいと思います
「日本全国の学費がない学生に奨学金を渡そう」という福祉サービスが考えられました
募金を募って学費が足りない学生に奨学金として学費を渡します
TVメディアも賛同しTVで特集も組まれました
「学費のない学生に奨学金を」というスローガンも組まれました
「学費のない学生が大学に行けないのは自己責任」というイメージは払しょくされつつありました
学費のない学生たち
学費が足らない学生たちはちょうど日本全国で1万人いました
また足らない学費の金額も100万円ちょうどだったとします
もちろんそんな偶然ないですが…
1万人×100万円でちょうど100億円が足りていない学費の総額になります
奨学金の福祉サービスはじまる
では奨学金の福祉サービスがスタートしました
まずはTVメディアやネットなどで奨学金の募金を募ります
開始から1年で1億円の募金が集まりました
募金してくれた人もそれなりにいたのです
この話を聞いた第三者は「それは良かった!」や「人のために何かするって素晴らしいね!」というかもしれません
みんなの募金によって1億円が集まる
みんなの募金によってなんと1億円ものお金を集めることができました
TVメディアもまた番組を組んで「奨学金の募金が1億円も集まりました」と報道しました
TVを見ていた視聴者も「よかったね」と喜んでいます
さて何か問題はないでしょうか?
奨学金に必要な金額はいくらだったでしょうか?
それは100億円です
学費が100万円足らない学生が1万人いますので、100億円が必要な金額になります
1億円自体は大金かもしれませんが、100億円の1%しか集まっていません
あなたは募金こそしなかったものの番組を見て奨学金のサービスを応援しようと思いました
福祉サービスが呼びかける
ふたたびTVで特集が組まれました
「学費のない学生のために奨学金を!」というスローガンで番組が作られました
これを視聴した第三者が募金をしたりもしました
なんと1億円もの金額が募金により集まり合計2億円になりました
しかし奨学金に必要な金額はいくらだったでしょうか?
それは100億円です
学費が100万円足らない学生が1万人いますので、100億円が必要な金額になります
2億円自体は大金かもしれませんが、100億円の2%しか集まっていません
今回はあなたも100円ほど募金しました
福祉サービスがさらに呼びかける
さらにふたたびTVで特集が組まれました
「学費のない学生のために奨学金を!」「困っている人に救いを!」というスローガンで番組がまた作られました
これを視聴した第三者がまたまた募金をしたりもしました
なんと1億円もの金額が募金により集まり合計3億円になりました
しかし奨学金に必要な金額はいくらだったでしょうか?
それは100億円です
学費が100万円足らない学生が1万人いますので、100億円が必要な金額になります
3億円自体は大金かもしれませんが、100億円の3%しか集まっていません
あなたは前回100円も募金したのにもかかわらず、今回はなんと500円も募金しました
合計600円も募金したのです
あなたはどう思ったか?
結局、奨学金の福祉サービスは3億円しか集まらなかったです
つまり1万人の学生のうち3%の300人しか学費をわたすことができませんでした
これは福祉サービスとしては失敗です
なにしろ9700人もの人が学費が払えない状況なのです
例えば、国民全体が貧困にあえいでいて政府が3%の人にしか貧困対策をしなかったら国民はどう思うでしょうか?
あなたが福祉サービスを受ける側ならいいと思わないはずです
第三者としては
最初に奨学金のTVをみて共感し
次にもう1度TVでみて100円を募金し
その次にさらにもう1度TVをみて、さらに500円募金しました
つまり赤の他人に3回も好意を持ったことになります
プライベートなら十分
いろんな意見があるかもしれませんが、プライベートなら十分な内容かもしれません
例えば講演会やイベントなどでたまたま隣の人と話が弾んだとします
その人とはもともと初対面の他人です
相手は学生で学費が足りないらしいです
その人にあなたは「奨学金制度とか調べてみた?」聞いてみて
相手が「まだ調べていない」言ったら、一緒に調べてみたり
そのあと一緒に食事ををして、あなたが相手の分まで奢ったりして相談に乗ったりしたら
そんなにひどい内容ではないかもしれません
善意遠近法はプライベートと勘違いする
善意遠近法はプライベートの好意や、赤の他人への好意と福祉サービスの基準を勘違いしてしまうことが多くあります
福祉サービスでは基準を全く満たしていない内容を、赤の他人の無関係者にプライベートでいいことをすることと混同してしまう現象です